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山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

ムック「ドラマー神保彰」 世界が尊敬する日本人100人に選ばれた男

まだ私がアメリカにいた11月、ライターの大先輩である工藤由美さんからお電話をいただき、神保彰さんのムックが出るから原稿を書くのだと伺っていました。日本に帰国したら、ちょうどそのムックが発売になっていて、さっそく編集部の方に送っていただいて拝読。

神保さんをテーマにした本だと、ドラムのテクニック解説方面にいったら、それはもう難しいことになって、私などには理解不能なんじゃなかとちょっとビビっていたのですが、ぱらぱらとめくってみると、これってドラマーじゃない一般の音楽ファン向けの読み物ですね。

ドラムに関する専門的な記事といえば、ドラムセットのお世話をしている枝川光孝さんの話として、ドラムと素材と音の違いについて、なり方を「アイウエオ」で表現しているところが面白かったです。バーチがウ行、メイプルが「ア」行、ロック・ツアーとオークが「オ」行、ビーチが「エ」行・・・でも、専門的な話といえばその3ページぐらい。セットの写真はたくさんありましたけれど。

神保さんの書き下ろしの原稿が多いのに驚きます。トラベローグ中欧ツアー2010、ロスレコーディング2010。写真がいっぱい。おそらく神保さんがお撮りになったんでしょうねー。神保さんの日記の更新のまめさはすばらしい。そしてご自分の文章のスタイルというのが、もうすっかりできあがっていますね。淡々と、飄々としていて、すいすい軽く読めてしまう。時々「ごーん」とか「げほっ」とか、擬音が入ったりして、なんだか可愛い(しかし、擬音が多くなりすぎても、かわいらしすぎて気持ち悪くなりますので、そこをほどほどに抑えるバランス感覚がまた見事)。これだけ長い文章を読ませてしまう筆力は凄いと思います。

それからホームページの日記に加筆した原稿を、2008年から2010年のものまで一挙掲載。いちどウェブ上で読んではいましたが、こうして紙でじっくり読むと、改めて神保さんの活動ぶりを俯瞰することができます。世界中で演奏して、おいしいものを探して食べて。

「あきらじんぼ物語」、この神保さん自身による自伝は、ウェブで読んだことがありましたが、ハービー・メイソンにもらったブリトーすが「鳥のえさの味」だったというくだり、「シャンバラはうまくいきませんでした」という一文など、神保さんのされてきたたくさんの経験に、なるほどねーうーむと改めて考え込んでしまう箇所が多数。

工藤由美さんの「神保彰について論じる」原稿3ページ。なんとここに私のコメントを引用してもらっており、恐縮です。「圧倒的な技術力」「優れた作曲能力」「善良な人間性」「目標設定・計画・実行」・・・うんうん、納得。「野球界のイチローのようでもあり、それでいて常に「隣のお兄さん」的な優しさを併せ持つ」まさにその通り。

それから中田利樹さんが超ロングインタビューを執筆なさっています。活字ページだけで10ページ以上。こういうインタビューはアーティストの内面にじっくり迫っていけるので、個人的に大満足です。

「LAに住もうとは思わなかったんですか?」という質問が、中田さんらしいなあ。それから、今、耳の保護のために「ipodを持っていない」という話。耳の保護という観点から、イヤホンで音楽を聴くことについてもう一度考えなくちゃいけないかもしれないですね。背骨を支えている内側の筋肉が大事だとか。

私が90年代にインタビューしたときには「1日1曲書く」とおっしゃっていたんですが、「いまはそんな馬鹿なことはしなくなった」とここでは話していらっしゃいました。馬鹿なことっていう表現がまた、いい曲がたくさんできたかわりに、すごく変な曲もできちゃったのだろうか? というようなニュアンスが感じられてなんともいえないですが。

野呂さん、向谷さん、角松さん、それから小倉智昭さん、マクドナルドの取締役の原田泳幸さんが、神保さんの魅力について語っているページもあり。そして神保さんが全ディスコグラフィーについてコメントを寄せており、これを読んでいるともう一度アルバムを聞きなおしたくなりますね。このへんは神保さんの日記を毎日チェックしているファンの方々にとっても、目新しいネタがありそうです。

とにかく、神保ファンには必読の1冊といえましょう。

ヤマハムックシリーズ ドラマー 神保彰 「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた男

ヤマハムックシリーズ ドラマー 神保彰 「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた男

ロスで秋にレコーディングしていたアルバムも新しく出たんですね。

ジンボジャンボリー

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