山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

渡辺香津美ジャズ回帰プロジェクト モーションブルー横浜 1月14日 2nd

先週末のことになりますが、ギターの渡辺香津美さんのトリオで則竹さんが叩くというので行ってまいりました。モーションブルー横浜の2ndセットです。

則竹さんは、高校2年でカシオペアをコピーした後、高3では香津美さんバンドをコピーしていたと確かどこかで読んだ気が。それで私も「トチカを聴かねば」と聴き始めたのはもうだいぶ前のことになります。それ以来、香津美さんのCDはちゃんとチェックしているのですが、私の場合、どうもジャズ寄りのアルバムだと、教養が足りないのか、どうもぴんとこないんです。結局、フュージョンっぽい「トチカ」が一番好き。

でも、最近出た「ジャズ・インプレッション」は、ジャズ寄りではあるけれど、則竹さんが叩いているせいなのか、なんだかピンときたというか、わかったような気がしたというか。

それもあってこの日のライブ、出かけてみました。サックスが本田雅人さんというのも「どうしても行かなきゃ」という後押しになりましたね。長年の則竹ファンとして、「憧れの香津美さんと共演」という則竹さん自身の思いを重ねずにはいられません。


全体を振り返ると、「クレオパトラの夢」から始まり、ジャズ回帰プロジェクトといっているだけあって、基本はジャズなライブでしたが、前半はフルアコだったのが途中からセミアコになって、私はギターの詳しいことはわかりませんが、音がどんどんゆがんだりいろんなディストーションといいますか、ロックっぽい音も織り交ぜ、とはいってもずーっとゆがみっぱなしではなく、さくっと澄んだ音に戻ったりするんですが、純然たるジャズではなくて、やはりフュージョン的な要素はあるライブでした。ジャズとフュージョンの中間系?

そして改めてギタリスト香津美さんのすごさにノックアウトされました。なんか、音が、太い!!!! 音が太いって、何がどうすると太くなるんでしょうね? マイケル・ブレッカーのサックスも音が太いっていつも思ったんですけど。朗々としていて、キンキンしていなくて、でもよく鳴っていて、すごい存在感なんだけど、ベースとドラムスともうまく調和している、なんともいえないいい具合の「太い音」。ソロの展開がまた、不思議なくらい退屈しない面白い具合に続いていきます。

途中から本田雅人さんが入り、ソプラノサックスにハーモナイザーをかけて、倍音を一緒に鳴らしたインパクトのある音で、ものすごい勢いで飛ばしはじめたんですね。それまでちょっと落ち着いた感じで始まっていたのが、そこで急に温度が急上昇。そこで、則竹・本田のふたりだけでインプロビゼーションを始めちゃって、これがいつどこで見ても圧巻、年季の入った「ふたりの世界」状態といいますか、息もつかない怒涛の即興がデュオで続きます。これってほんとにすごいんだけど、香津美さんのバンドに来てこれをやっていいのか、もうちょっと遠慮しなくていいのか、等々余計な心配が頭に浮かんだ頃に、ソロが香津美さんにバトンタッチ。

おおー!!??? 明らかにそれ以前のソロとは違い、ギターが一気にヒートアップ。ギターとドラムのコンビネーションの緊張感、疾走感はすさまじく、則竹・本田のデュオに一歩もひけをとらない、いや、それを上回るかの勢い。あの「ふたりの世界」を展開したあとに、クールダウンして仕切りなおすことなく、ひるまずにそこからもっと発展させちゃうというもっていきかたは、香津美さんが始めてでしたね。これはものすごいものを聴かせていただきました。

ふと冷静になりバンド全体を見渡してみると、とにかく香津美さんの演奏は、音もインパクトがあっていい音で、ソロもぐいぐいひきつけられちゃうし、ベースの井上陽介さんも超余裕で超絶技巧を披露しつついい感じで演奏しているし、則竹さんも香津美さんに全身全霊でついていく感じが隠し切れないながらも、しなやかで力強く、細かいところも素晴らしく聴きごたえのあるプレイが満載。一瞬たりとも聞き逃せない。本田さんと香津美さんのインタープレイも、実に有機的でどちらもすごい存在感。この組み合わせは素晴らしかった。

アンコールの「マンハッタン・フル・ダンス」、これは「トチカ」からのフュージョン系ナンバー!! ベースの井上さんも、なんとエレキベースに持ち替えて。もう、ここまで懐かしいナンバーを披露されたらもう、うるうる来ますねえ。

といいつつも、ライブが終わって頭の中で鳴っている曲は、「ジャズ・インプレッション」の中で本田さんが参加していた曲で、この日演奏されたものだったりして。トチカの中の曲よりも、こっちがインパクトあるっていうのは、すごいことじゃないだろうか、いや私の理解力の問題だけか、いややっぱり、この「ジャズ・インプレッション」はいい、というかこの3人というか4人の組み合わせ、すごすぎる! 最高!!! といった具合で、大変まとまりませんが、満足しすぎて興奮状態がおさまらない、1週間たっても、まだ余波が残っている、そんなライブでございました。


香津美さんがオラシオ・エルナンデスとリチャード・ボナと共演している「Mo'Bop2」を引っ張り出してみました。ライブで聴いた「クレオパトラの夢」が入っているので。すごく面白い。

http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=327657&log=20110115http://blogs.yahoo.co.jp/catseyesaregreen/archive/2011/1/17

TO CHI KA

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Jazz Impression

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MO’BOP II

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  • アーティスト: Kazumi Watanabe New Electric Trio,渡辺香津美,Richard Bona,Horacio El Negro Hernandez
  • 出版社/メーカー: イーストワークスエンタテインメント?????
  • 発売日: 2004/09/21
  • メディア: CD
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LOTUS NIGHT

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↑このロータス・ナイトが新譜ということで、ライブ当日紹介されていました。

http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/watanabe-kazumi/2000000577
工藤由美さんのインタビュー、この夜も駆けつけていらっしゃいました。