山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

ディメンション 目黒ブルースアレイ@2011年7月8日

4月に続いてのディメンション。前回はモーションブルーで1stセットだけだったのだが、今回はブルースアレイだからたくさん聴けた。

年末にもライブをやっていたそうだから、「23」リリース以降、もう3度目のライブということになるのだろうか?

私も帰国して半年が過ぎ、だいぶ、日本のライブハウスでのライブってものに慣れてきた。生のミュージシャンを舞台で見るだけで幸せ!! ってな時期はそれはそれで非常にいいものだが、自分としては物足りなかった。今回ぐらいから、ようやく冷静に、ステージで何が起こっているのか観察できるような感じが戻ってきた。

基本は最新アルバム「23」からの曲を中心にした演奏。この「23」は、私にはものすごいお気に入りで、今年なんだかんだいっていつもずっと聴いている。非常によくできたアルバムで、メロディも印象的だしサウンドもお洒落だし、かといってお洒落すぎて上滑りすることもなく、エネルギーみたいなものがしっかり伝わってくる。

ライブでは、この「23」の楽曲を、目の前でやってくれた。それだけで、大満足だった。ディメンションのアレンジはなんか最近メンバーの音の一体感が非常に強いので、どれがギターでどれがキーボードなのか、下手をするとサックスに切り替わった瞬間もぼーっとしているとよくわからないように融合しちゃった感じで耳に入ってきている。そんなふうにぼーっとしている私のようなリスナーにとって、ライブというのは、どこを誰が演奏しているのか切り分けて情報を確認するためのすごく良い機会なのである。まあ一応、打ち込みサウンドも使っているので、「これは小野塚さんが手で弾いてるんだ」とか、「こういうギターの音なんだよね」と、聴きながら確認していくのも、また面白いのである。

「23」の1曲目、"After the Rainbow"なんか、冒頭が何拍子かよくわからないような、湧き上がるようなフレーズから、いつのまにかみんな楽器が入ってきて、ちゃんと4拍子の曲が始まっている。CDで聴いていても手品みたいだと思うのだが、ライブだと、手品というよりは、どこかにちゃんと数えるポイントがあって、楽譜がある普通の曲なんだなあと変なところで確認できて、なんだかほっとした。

難しいことをやっているんだろうなあ、たぶん。ドラムも大変そう。でもやっぱり、リラックスして聴ける。サックスやギターがのびのび音を伸ばしている間、自分も伸びをしているような気持ちよさを感じてしまう。小野塚さんが鍵盤でいろんな刻みをやっているときの小気味よさはなんといえばいいのだろうか、おいしいせんべいをばりばり食べているときの至福のひととときにも通じる、なんて書いて許されるだろうか。カッティングが猛烈にうまいギタリストのプレイに「くうー!!」とうなっちゃうのに通じるような。

いろいろいい曲があった。

"Red Moon"、増崎さんがMCで、日没をイメージした素敵な情景を話してくれて、そこから演奏が始まった。別にあのお話があったからというわけじゃないんだけれど、ミディアムテンポで、ギターがひとつひとつ音を長く伸ばしながら、コードが鮮やかに移り変わっていく曲の構成が、月の色が刻々と変わっていく様子を表しているのか。増崎さんのギターは、やっぱりいい。繊細で力強くて表現力があって、淡々としているのに、胸をえぐられるような、たまらない感じが、くせになって、いくらでも聴いていたくなる。
 隙間を埋めるように小野塚さんが弾いていく、いろんな音がまた素晴らしい。

"STORY"、これはサックスが歌い上げるバラード。勝田さんのサックスって、パンチのある音というイメージだったんだけど、この日しみじみ聴いたら、つやを消したような、ふわーっとした、雲のような、シュークリームのような音が、波のように寄せては返して、一気に勝田さんの世界に持っていかれてしまった。途中までドラムがお休みで、途中からドラムが入ってくるという展開も、まあ定番といえば定番なのかもしれないけれど、ドラムが入る瞬間の「来た!」という充実感はやっぱりなんともいえない。


心から楽しみながら、いちおう意地悪く、あら探し的な聞き方もしてみた。"Story"で勝田さんのやわらかく歌い上げるサックスに聞きほれていたのだが、ふと、テンポがおそめおそめになっているような気がした。しかし音色に歌い方が素晴らしいことには変わりない。それから、どの曲だったか忘れたけど、増崎さんのギターがメロディをがーーーっと弾き始めるところで、昔のような鬼のような勢いが最初の部分になくて、拍子抜けしてしまった。さらに勝田さんと増崎さんのユニゾンで伸ばすところで、ピッチがいまひとつ完璧に合ってないような気がした。でも、別にそれはどうというほどのことではない。勝田さんのサックスと、増崎さんのギターが気持ちよくハモっている瞬間は、幸せを感じていられた。

昔のディメンションで、細かい技術的な問題というか、そういうことがなかったのか。私が年の功で今頃になって気がついただけなのか。そこまではわからない。ただ、「6th」の頃のような、鬼気迫るような迫力がいまのディメンションにはない、ということは、あるかもしれない。

でも私は「6th」の頃もも好きだけれど、いまの私には、いまのディメンションのほうがしっくりくる。「6th」を聴きなおすと、心臓が苦しくなってくるのだ。その苦しさは、なんだか甘い魅力があって、それはそれで悪くないんだけれど、長い時間きいていると、すごく疲れる。

いまのディメンションは、長く聴いていても、疲れないし、息苦しくならならい。
夜の首都高のドライブBGMでも当然合いそうだけど、船に乗って、海を眺めながら聴きたいような曲が増えている。

いま、新しいアルバムを作っているんだそうだ。早く聴きたい。

「こういうコードない?」と勝田さんが小野塚さんからあれこれ引き出す、というのはディメンションのこれまでのアルバム作成過程ではよくあった話。今回は、岡本太郎の絵が出てきて、「こういうコードない?」と勝田さんが尋ねてきたそうで。小野塚さんも勝田さんも、ほんとにすごい(笑)。これぞコラボレーションである。

ブルースアレイでディメンションを聴きながら、これは恵比寿のガーデンホールで聴いたっけ、これはSTBで聴いたっけ…と、以前は、もっと大きな会場で、ライブをやっていたんだと思い出した。その頃よりも、今のほうが、ライブに来るお客さんは少し減ってしまったことになる。でもあまり悲しい感じはしない。ブルースアレイは立ち見も出る満員状態。ブルースアレイが満員な状態ならば、いいではないか。見る側も、ブルースアレイで見られたほうが、近くて、よく見えて、うれしいし。

確か10月ごろに、アルバムを出してツアーをするといっていた。いつなんだろうか。
帰ってきたばかりなのに、もう次のライブが聴きたい状態になっている。


http://youtu.be/ss_mUc4RqW4

youtubeにアップされたリハーサルの模様。

この"groove it"もディメンションらしく、絶妙のコードワークに印象的なメロディが乗っかっていて、なんともお洒落でエネルギッシュな仕上がり。

こうやって小野塚さん方面から見ると、ローズ(の音色)で小野塚さんが刻んでいるいろんな伴奏が、隠し味というか底流というか大事な役割を果たしているし、いろんな音をいっぱい弾いているのがよくわかるんだけど、ぱっと聴くとやはり勝田さんのサックスに耳がいくように設計されている曲なのだ。「ヴォーカル役ですからね」とにこっと笑う小野塚さんの顔が浮かんでくる。この小野塚さんの縁の下な感じが本当にセンスよくて、いつもうなってしまう。

この日、「22」からは、"fine"も演奏されたと思う。こんなことを書くのは本当に失礼なのはわかっているのだけれど、最近なかなかディメンションの曲名が覚えられなくなって実は困っている。私も40になってしまい、記憶力もいいほうだったのに最近はホントによくなくなっている。

でも"fine"は、この前モーションブルーで小野塚さんがyoutubeにリハの映像をアップしてくれた曲。あのときも聴いて、ゆったりとして気持ちよくて刺激的でいい曲だな、と思って、今回もやっぱりいいな、と思いながら聴いた。だから覚えている。

23

23

22

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