山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

渡辺香津美ジャズ回帰トリオ+1 2011年8月16日 STB139六本木

モーションブルーで聴いた渡辺香津美さんトリオのすばらしさが忘れられず、7月に聴いたB.B.STATIONでの本田雅人さん則竹さんの共演のインパクトもいまだ生々しく、これはどうしてももう一度聴きたいと思い、行ってきた。

「ジャズ・インプレッション」の中の曲を中心に、「モ・バップ」の曲も少々(遠州つばめ返しとか、クレオパトラの夢とか)。ベースはCDでも演奏している井上陽介さん。

 サックスの本田さんは全曲参加ではなく、半分よりはちょっと多めに出ていたかな? という割合。

 香津美さんのエレクトリックで骨太でインパクトな音と、本田さんの輝かしいサックスの組み合わせ。私はギターのことは詳しくないのだけど、香津美さんは足元のペダルをいろいろ踏んで、音色を変化させていた。その変化の具合に負けまいと(というか対応して?)、本田さんもハーモナイザー(でいいのか確認していないのだが、たぶん)でサックスの音を電気的に変えてちょっと歪ませている。

 ギターはソリッドなエレキギターに、サックスはEWIにしてしまえば、もっと超エレクトリックな方向になるのだろうけれども、そこまではいかない、でもある程度の電気的な音の変化はつけている。もちろん純粋に楽器そのままの電気なしの濁りのない音のほうがメイン。濁り系もパレットにあります、といったおtころ。

 ジャズ回帰というお題でやっているこのプロジェクト、この日は香津美さんのオリジナルだけでなく、ジャズの名曲をたくさん演奏してくれている。ウェス・モンゴメリーの「フォー・オン・シックス」 とか。コルトレーンの「インプレッションズ」など。


 私はこれまでジャズもそれなりに聴いてみたのだけれど、やっぱりフュージョンのほうが自分には合っているなと思う。ただ、香津美さんのジャズ回帰プロジェクトだと、楽しめる。

 そこで思い出した。香津美さんが、ステップスの「スモーキン・イン・ザ・ピット」に私はステップス・アヘッドとかのマイク・マイニエリ近辺がすごく好きで、香津美さんはそのへんのミュージシャンと一緒にアルバムを作っていたんだっけ。

 あの「スモーキン・イン・ザ・ピット」な感じと、共通するものが、このバンドにはある。

 フュージョンどっぷりな私からすれば、この「ジャズ回帰プロジェクト」は相当ジャズっぽいのだけど、おそらくジャズの人からいわせると、これはフュージョンだということになるのかも。

 香津美さんは、あらゆる面でミュージシャンはこうあってほしい、という理想の上をいっている。作曲家としてもプレイヤーとしても最高で、人間的にも暖かくて(取材したことはないけれど、たぶんそうなんだと思う)、英語も流暢で発音もすばらしく、NHKのクラシック倶楽部でクラシックギターのリサイタルをしてしまうジャズギタリストって…。今頃になって、その偉大さと魅力が理解できるようになったのだろうか。私は、このごろ、とにかく香津美さんのCDばかり聴いている。なぜ18才のときにこのすごさがわからなかったのだろう。情けない。

本田さんと香津美さんが一緒にメロディを吹いたときの、ふたりのシンクロ具合が感動的に美しかった。ギターは減衰する楽器だから、そこ本田さんはサックスで膨らませたり弱めたり、ダイナミクスや息の切り方などで、よりメロディを見事に聴かせてくれていた。

モーションブルーでは、井上さんはエレキベースを最後に出していたんだけれど、今回は全部ウッドベースで演奏していた。なんでだろう。理由はわからないのだけれど、前回は本田さん則竹さんふたりだけで盛り上がっていた箇所があったのが、今回は全体の流れにうまく溶け込んでいて、前回よりも全体的にまとまりがさらに良いというか、こなれた感じだった。

ライブが終わって、コルトレーンを真剣に聴いてみようかなと、なんとなく思った。香津美さんがこれだけカバーしているんだったら、私の好きな要素のルーツがそこにあるんじゃないか?

そういえば、則竹さんのお父様は、ほとんどコルトレーンのレコードを持っていて、子どものころ、家で大音量でかかっていたという話を昔どこかで読んだ。

帰宅して急いでユーチューブで聴いてみたら、なんだか、すごくストレートに心に入ってくる。大学時代に試しに聞いてみたときは、よさがぜんぜんわからなかったのに!!! これから徹底的に聴いてみよう!!!!!!

ライブから帰ってくると、何かしら、それまで不鮮明だったものがくっきりと生き物のように見えてくる、不思議な変化がある。

今回はコルトレーンが収穫だったかも。

Jazz Impression

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スモーキン・イン・ザ・ピット

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