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山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

Pat Metheny@Blue Note Tokyo 2012.1.22 1st show

パット・メセニーのブルーノート東京公演、ゆうべ行ってきました。


これからいかれる方でネタバレ希望されない方は読まないでくださいね。













では、いきます。



今回はパットと、ベースのラリー・グレナディアの2人によるデュオ。

開演時間15分前に到着すると、バーカウンターの前のスツールも人がぎっしりで、もう席がほとんど残っていない!! すごい熱気です。ステージのすぐ脇の席のテーブルが残っていたのでそこに座りました。するとステージにはギターとコントラバスがセッティングしてあるのですが、うしろのほうは黒い幕で仕切ってあって、そこに、木製食器棚に並んだ大きなびんが並んでいます。奥のほうには、シンバルや太鼓がつりさがっているのが見えます。オーケストリオンのセットに違いありません。ステージ脇、私のとなりには、ノートパソコンではなくて、大きなディスプレイのパソコンを見て座っているスタッフが。たぶんオーケストリオンのお世話をしている人でしょう。

照明が落ちて、客席の間から、ふわふわ頭がこっちに移動してきます…パットだ!! バリトンギターを持ったパットが登場。ひとりで、ドヴォルザークの「遠き山に日は落ちて」を演奏します。ベースラインを鳴らしながら、メロディを弾き、その合間に伴奏も。ワンコーラス終われば、ベースラインを鳴らしながらアドリブももちろん弾きます。演奏する側は忙しいはずなんですが、まったく忙しさを感じさせません。ギターの弦が共鳴しあって、そのかすかな共鳴がかすかなんだけれどすばらしくて、耳をどんどん澄ましているうちに、曲に引き込まれていきます。パリトンギターのソロの魅力の基本形がここにあります。

1曲終わって、ベースのラリー・グレナディアが登場。ここからはベースとギターのデュオが次々に演奏されます。ふたりでぜんぜん違うことをやって掛け合うというよりは、とても一体感があると感じました。パリトンギターのソロだと、やはりギターの構造上、ベースラインを弾きながら演奏するのは難しい曲もあるので、ベース部分はラリーに弾いてもらう、とまではいきませんが、バリトンギターソロで感じたアコースティックで温かみ、親密感のある表現をふたりで作り上げていました。

そこには、とても特別な時間が流れていました。あまり奇抜なことはしていなかったと思います。わからなかっただけかもしれませんが、奇抜な印象というのはなくて、淡々と、心をこめて、ギターが一心に歌っている、それだけでした。それが、どうしようもなく心に響いてきました。心の中の水平線の、どちらかといえば水面から下の部分にある水を、ゆっくりとかき混ぜるような時間が流れていきます。ブライト・サイズ・ライフ、グッド・ボーイ、などを演奏していました。「シークレット・ストーリー」の"Always and forever"も。これは大好きなアルバムに入っている曲なので、特に印象的でした。

全体の3分の2ぐらいまで来たところで、ちょっと様子が変わりました。パットはギターシンセに持ち替えて、ベースも現代音楽っぽい効果音みたいな不思議な音を弾き始めます。シンバルや鉄琴などの音がしてきます。ステージ上の黒い幕が左右に開いて、オーケストリオンのセットが現れました。よく見えませんでしたが、ピアノはなかったもようで、縮小版のセットでした。
(Patweek掲載、石沢功治さんのレポートを見ると、10月半ばに行われたNYのブルーノート公演でも使っていたと思われます。http://patweek.com/modules/pico/index.php?content_id=10)

どこがどう即興になっていたのかもよくわかりませんでしたが、オーケストリオンが刻むパターンに、弾きまくるパット、その組み合わせを聞いていると、PMGにも通じる壮大な彼自身の世界が出現していました。長い1曲でしたが、1曲だけでオーケストリオンのコーナーは終わってしまいました。こんな大掛かりなセットを、たった1曲のために…。この実験的スピリットが、ますますパットを特別な存在にしていることは間違いありません。

アンコールは、パットがひとりで登場して、またバリトンギターで、ビートルズの"And I love her"を演奏。やっぱり、とても特別。ただメロディを弾いているだけでも、どうしようもなく伝わってくるのでした。

セットリストは、毎日かなり変わっている模様です。
Patweekの掲示板に投稿されています。
http://patweek.com/modules/d3forum/index.php?topic_id=67

前回のブルーノート来日時のインタビューでも、

jazz Life (ジャズライフ) 2012年 01月号 [雑誌]

jazz Life (ジャズライフ) 2012年 01月号 [雑誌]

でも言っていることですが、MCで、日本のジャズコミュニティはとても素晴らしくてジャズを支える大事な存在、演奏する機会を与えてくれてありがとう、といっていました。これはお世辞でもなんでもなくパットの本心だと思いますし、私自身も、日本のジャズ・リスナーは確かにジャズを支えていると感じます。

CD購入、ライブチケットの購入という行為ひとつひとつが、ジャズを支えています。音楽に対する支出は、単なる買い物ではないのです。誇りと満足感を持つべき行為。


[http://d.hatena.ne.jp/mimeyama+writer/20100207/1280688190:title=
アルバム「オーケストリオン」について]

「オーケストリオン」すみだトリフォニーホールでのライブレポート

Jim Hall & Pat Metheny

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What's It All About

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One Quiet Night

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Trio Live

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