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山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

東京ジャズ 小曽根真・ジョーサンプル・オーネット枠の代打スペシャルセッション 2012年9月8日

東京ジャズ、土曜日の夜の部を聴いてきました。カシオペア復活ライブでもある日曜日は予定が合わなくて、土曜日のほう1日だけ、しかも夜の部のみ参戦でしたが、なかなか面白かったです。

全体は三部構成となっていました。

最初は小曽根真バンド。マルサリス兄弟のお父様のピアニスト、エリス・マルサリスとの2台ピアノ。エリスが弾き始めると、彼のリズムと音色によって、独特な空気にホール全体が染まってしまうような不思議な時間が流れはじめました。弾きまくっているわけでもないのに。ジャズの巨匠というのはこういう凄さを備えているんですね。
その後、クリスチャン・マクブライドと、ジェフ”テイン"ワッツによる小曽根トリオ。実験的な音が面白く聴こえるときもあり、難しくて私にはわからない部分もあり(爆)、音楽の流れは実に心地よくきっちりしていて、安心しつつも、刺激がちりばめられた演奏でした。

次にでてきたのはジョー・サンプルのバンド。ステージにグランドピアノもないし、すごい大所帯バンド。そしてジョーはアコーディオンを弾いていました。しかもほとんど歌もの。ジョーサンプルの演奏はぜんぜんフィーチャリングされてないっ(爆)…そういう目的のバンドじゃないんですね。とにかくグルーヴが独特で、すごく強力。フロリダのキーウエストに行ったとき、町中のライブハウスから演奏がガンガン聞こえてきましたが、そのときの感じを思い出しました。南部のテイストをそのまま直輸入!! という感じで、トリップできてよかったですね。ギターの歌いかたがめちゃくちゃブルージーでファンキー、これもまたすごいと思ったら、ニューオーリンズを拠点に活躍する山岸潤史さんでした。生で聴けて感激です。

そして第三部。みんなが楽しみにしていたオーネット・コールマンが、2日前になって来日できないことになり、小曽根さんの仕切りでスペシャルセッションが行われることに。オーネットの演奏を一度聴いてみたかったので、すごく残念でしたが、たった2日間でどれぐらいの演奏をしてくれるのか、ぎりぎりのところをリアルに聴けるなんて面白いよね、という、好奇心をそそられてしまいました。
リズム・セクションは小曽根バンドのクリスチャンとジェフが担当。
ジョーサンプルとエリス・マルサリスの共演とか、小曽根さんがオルガンを弾いたりとか、オーネットの曲を、ありえない顔あわせでセッション…めったに聴けない展開だったことは間違いないです。私はセッション大好きなので、次はどう来るか? どうくるか?と、手に汗握ってました。

準備ができなかったセッションのほうがやっぱり、シンプルになっていて、作りこんでいなくて、ミュージシャン本来の素の部分が出て、面白いです。

TAKE6が来て、ア・カペラで1曲歌ってくれたときには、おそろしく完璧なピッチのハーモニーに背筋がぞーっとしました。やっぱりア・カペラは純正調ですから、空気が違いますね。あれだけグルーヴしながら全員のピッチが完璧で…彼らには普通のことかもしれませんが、凄すぎる!!

最後には全員でのセッション。人数もすごく多くて、つぎは誰? いつ、始まるの? と、キョロキョロしながら聴いていました。「寄せ集め」的なのかと思ったけれど、始まってみれば、すごくファンキーなテイストでまとまっていて。エリスは昔からずっと、ジョーサンプルはずっとじゃないけれど近年、ニューオーリンズで活動していて、小曽根さんもニューオーリンズの音楽を聴いて育ったそうだし。つながっているんですね。

やはりジャズのミュージシャンにとっては、セッションはある意味本領発揮の場面でしょう。ふだんありえない組み合わせであればあるほど面白い。東京ジャズにはもともとこうした「スペシャルセッション」の枠はなかったわけだけれど、来年、もし、誰かが来られないからではなくて、もともとの「スペシャルセッション」という枠がある日があったら、私はそこの日に行きたいですね。

最後はスタンディングオベーションのなか、小曽根さんがひとり出てきて、オーネットの「ロンリー・ウーマン」。楽譜がすぐにみつからなかったらしく、小曽根さんがピアノの前にすわって即興しているあいだにスタッフが楽譜を持ってきました。とっても悲痛な雰囲気の曲でした。最後に小曽根さんが低音を3回鳴らして、その音が内部奏法で、がつん、がつん、がつん、と終わったのがすごく印象的でした。そして照明が消えて、真っ暗に。明るくなったときに小曽根さんは、もういませんでした。ものすごく盛り上がったセッションだったけれど、やっぱりオーネットが来なかったのは残念だった。そんな気持ちを小曽根さんと客席で共有できたエンディングでした。

オーネットのファンには厳しかったと思うけれど、私のような小曽根ファンには、歴史的なすごい場面の目撃者となれた、特別な日になりました。

カシオペアの復活ライブは聴き逃しましたが、なんだかもの凄い盛り上がり方だったそうで。カシオペアは、ジャズっていうかフュージョンなんだけどな。しかし東京フュージョンってイベント名もありえないだろうし(爆)、そのへんにこだわるのも意味がないか。新しく加わった大高清美さんのオルガンプレイがカシオペア・サウンドをどう方向付けるのか、10月の半ばにテレビで放送されるそうなので、それを楽しみにしたいと思います。