山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

フォープレイ@ブルーノート東京 2013年2月24日 2nd

計算されたアンサンブルと自由なやりとりが最高に楽しい!

昨夜はフォープレイのライブをブルーノート東京に聴きにいってきました。

フォープレイといえば、ギタリストがリー・リトナー、ラリー・カールトン、そしてチャック・ローブと変わっていまして、私は結成当時リトナーのころからずっと大好きでした。チャックになってからのライブ、今回初めてです。しかも今回はドラムのハーヴィー・メイソンが、12月にアキレス腱の手術をして経過がよくなかったため、クラレンス・ペンがかわりに来るそうで。日本のジャズファンにとっては、クラレンスといえば、小曽根真さんのトリオで何度も来日していたので、おなじみの名前でしょう。私も小曽根さんのトリオで何度も聴いたなあ。芯になるビートの感覚が完璧で、クールで繊細なんだけどパワーもあって、反応が素晴らしい、そんなイメージを持っていました。

気になるボブ・ジェームスのピアノのセッティングは、ヤマハのフルコン。弾きはじめて気づきましたが、ローズなどの音もピアノと同時にシンセで一緒に鳴っていたので、MIDIピアノだったのでしょうか。
ギターのチャックは、自分はエレキギターを抱えてましたが、ステージにはアコースティックギターも横向きで高くすぐ弾けるようにセッティングしてあって、最初の曲、新作「エスプリ・ドゥ・フォー」の冒頭、"ディセンバー・ドリーム"に出てくる印象的なギターのアルペジオは、アコギのほうで弾いていました。

フォープレイの曲は、テーマがあって、それにコードがついていて、アドリブを順番に弾いて盛り上がって、テーマに戻って終わる・・・というものとはだいぶ印象が違います。厳密にはそうなのかもしれないけれど、テーマが実に構築されていて長いんです。テーマのメロディも、ギターが弾いたらピアノに受け渡し、ベースラインもひとつの歌になっていて、バッハのシンフォニアとか、平均律のフーガのように、3つの歌が計算されて絡み合っている。ライブで聴くといっそう、ちょっとクラシックの室内楽を聴いているのにも似た感触がありました。お互いの歌いっぷりを聴きながら対話している感じが、とても素敵でした。聴いているうちに、自分の中から新しい何かが生まれて、生まれ変わるような不思議な感覚がしました。

そんなふうに室内楽みたいだな〜と思えば、日本のフュージョンをフォローしてきた私ならではのたとえですが、カシオペアみたい(爆)と思う場面がいっぱいあったんです。このカシオペアみたいというたとえが適切かどうかわかりませんが、半音階のいっぱい入った複雑なユニゾンをえんえんと3人で決めたり、ピアノ・ベース・ギター・ドラムの順にソロを何度もまわして、最初は2小節だったのが1拍になるまで単位を短くしていく様子であったり。ライブでこういう場面があると手に汗に握り、盛り上がりますね。ユニゾンのそろい方が日本人バンドの超・緻密なプレイに慣れている私からすると若干ラフな気もしましたが、それはそれで味があり、楽しめました。客席は、拍手というより、こうしたプレイごとに笑いが起こっており、私も何度も大笑いしてしまったのですけど、…リトナーのいたころのフォープレイって、笑う場面もあったけもしれないけれど、もっとカッコいいでしょ〜おお〜みたいな雰囲気だった気が。今のフォープレイって、すごい演奏をしているのに、それがステージ上のミュージシャンの間で閉じた空間になることが絶対になくて、「どう?これ?」という音での問いかけが、ステージ上だけでなく、観客にも同じようにちゃんと伝わって理解されている。あれはいったいどうして可能なんでしょう。あの「ステージ上のやりとりに、観客も混じっている感じ」は、かつて経験したことのないものでした。

ボブ・ジェームスのピアノは何度も聴いていますが、うーむ、最近自分が室内楽を始めたからか、改めて、彼のプレイヤーとしてのすごさ、うまさがわかってきた気がします。一番すごいと思うのは、彼が何気ない「ミソ」とか「ソミ」みたいなフレーズを、ぽろっ弾くだけで、なんともいえないお洒落なニュアンスがついていて、次に何が来るんだろうと耳が先を追いたくなっていく点です。おそらく鍵盤を離すタイミングのコントロールがすごいレベルに達しているのだろうなあ。

ドラムのクラレンス、見事な演奏で、ばっちりフォープレイにはまっていました。平均年齢をぐっと下げて、渋くまとまりすぎないようなエネルギーを与えてくれていたように思います。ソロの部分などではアフリカンテイストをお洒落に感じさせてくれました。でもハーヴィーだったら、もっともっと手数を抑えて、これだ〜という音をひとつ叩いて「こうきたか」とうならせるようなプレイをしてくれたかなぁ。妄想ですけれども。

ネーザンのベースとヴォーカルは絶品で、何がどう素晴らしいのかうまく書けません・・・ステージ上でも、彼が一番安定していましたね。

これまでだくさんライブに通ってきましたが、今回のフォープレイはちょっと凄かったかも。これまでの人生でいろいろ観たなかでも、最高のひとつに数えられる素晴らしいショーでした。彼らはアルバムも非常にクオリティ高いですけど、ライブが面白いなあ。そういうところも、カシオペアと似てると思っちゃうんですけれどね。

Esprit De Four

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Fourplay

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