夢の中に入ってしまったかのような不思議な時間でした。
「和」の演出があるというコンセプトなのかな? と予想しつつ雨のなか向かった、初のレ・フレール「キャトル座」。
実はこの日、電車が止まっていて、開演から少し遅れてしまい、オープニングは見られなかったんです。
ロビーに着いたら「真夜中の音楽会」、そして「Cross第4番」が聞こえてきました。ここでMCになったので入場。舞台上には、大きな縦長の窓が4つ並んでいて、窓の向こうの景色が照明で変化していきます。
しっとりとマイナーで美しい曲が、トークなしに続きます。
「海、落日の祈り」「月冴えゆく」「FLOW」「EAGLE」「シャクナンガンピ」…
静かに、でも説得力を持って語りかけてくる旋律。
拍を刻むピアノの音、一粒一粒が胸のぽっかりあいた穴に刺さってくる感覚。
ピアノの弦と弦が響き合って、うつろうハーモニー。
真っ暗なホールの中に浮かび上がる、ひたすらピアノを弾き続けるレ・フレールご兄弟の二人の姿を眺めながら、
なに、この感覚?
…ストーリーでもない、リズムだけでもない、
完全に音楽の世界の中に入った気がしました。
1曲終わるごとにさらに深い世界へと進んでいくかのような。
内部奏法のごおーんという低くて温かい響きに包まれながら、キラキラと輝く音が鳴っては消えてゆく、その様子をずっと聴いているうちに、
自分と空間の境目がなくなってしまうような。
後半は、「Boogie Back to YOKOSUKA」が流れるなか幕があがり、
手拍子しながら元気に盛り上げる構成。
「Happy Life」「空へ」「海へ行こう」…
脈打つビートに美しいメロディ。
「桜」「EARTH」での内部奏法を使った深い響きと中高音域の伸びやかな音、それぞれの感触を堪能しました。
終盤「DD ROCK」「On y va!」「明日へ」と、
がっつり盛り上がって、スカッと終了。
あとでよく見たらピアノはスタインウェイでした。
前半の曲のこれまでにない音の感触は、
おそらくスタインウェイなのも関係しているかも。
ベーゼンやヤマハとはまた違った透明感や深みがあるような気がします。
とくに中~高音域の響き方が
曲の持つハーモニーをきらびやかに引き出してくれるような。
ピアノと会場が違うと、曲の表情も違ってくる。
レ・フレールのライブに行くといつも思います。
この日は特に前半、
スタインウェイでMC抜きでひたすら演奏される
マイナーで静かな曲のオンパレードに
本当にどこかへトリップした気がしました。