山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

山中千尋さんに取材のためカプースチンを特訓する

先週は、カプースチンの楽譜をうっかり開いてしまい、その後そこから逃れ られないまま1週間たってしまいました。

というのも大げさなんですが。

発端は、山中千尋さんのニューアルバム「モルト・カンタービレ」の取材依頼をジャズジャパンからいただいたこと。

送られてきた音源を聴いたら、カプースチンの「8つの演奏会用エチュード」の1曲目「前奏曲」をやっているじゃあありませんか。

カプースチンといえば、ロシアのいまも生きている作曲家で、ジャズスタイルを譜面に書いたピアノソロ曲をたくさん作っています。そのロシア的要素とジャズスタイルの完璧な融合は、日本ではすでに熱狂的なファンが多数。
辻井伸行さんの先生としても有名になった川上昌裕先生は、カプースチンに魅せられて、ロシア語でカプースチン本人とメールのやりとりをして、 日本での楽譜出版にこぎつけてくださり、私たちが彼の作品を弾けるようになったのですね。

まあこの山中さんの演奏が、途中までは楽譜そのまま、途中からは即興という、それはそれはエネルギッシュでエキサイティングで、しかもクールでかっこよく、ため息ものでした。

 この曲楽譜持ってるじゃん! 大急ぎで棚から楽譜を出してきて、眺めてみたら、なんか、弾けそうな気がしてきちゃったんです。

8つの演奏会用エチュード。これの3曲目を一度譜読みして挫折しているんですが
山中さんが弾いていたのは1番。1番・・・難しそうだと思っていたけれど
なんだか弾けそうな気が。

本当は私、いま、シューマンのクライスレリアーナを練習しているんですが、 シューマンは完全にお休みしてカプースチンのこのエチュードの1番の最初の2ページだけを狂ったように練習していました。

2日ぐらいで譜読みできました。それから山中さんの演奏を聴くと「あ、ここから即興になったな」とか、「カプースチンの即興とはここが違うな」と、いろんなことがすごく聴こえてくるようになりました。

山中さんのアルバムでカプースチンは1曲だけなんですけれども(爆)
譜読みして弾いてからインタビューに行ったら絶対に面白い話が出来ると思い突っ走っておりました。

気が着いたらシューマンの練習が全然進んでいませんがエチュードの1番は2ページだけ弾けるようになっておりました(笑)。

調号はハ長調ですが、いきなりフラットがいっぱいついた状態から始まり途中でシャープがいっぱいになり、そのシャープがなくなってハ長調に戻ったと思ったテーマの1小節目が終わらないうちからまたフラットがついて別の調に。ジェットコースターみたいに転調の嵐。

・・・いったい何調なの?? とフェイスブックでぶつくさつぶやいていたら
ピアにスターHIROSHIさんが、
「無調というのもなんなので、夢調ってことで」
「カプースチンは調号を書くのが面倒だったのでは??」
というコメントをくださり、爆笑ものでした。

いちおうそのときそのときで何かの調にはなっているんだけれど1小節ごと、へたしたら1小節の前半と後半で調が変わっていたりして。

でもこれが、ぼーっと聴いていると、けっこうスムーズに楽しく聴けちゃう。転調がどうのこうのなんて別にどうでもいいんですよね。
楽しいことが重要ですから。
転調ガンガンしていることで、エキサイティングな感じが出ているのかも。

取材はとても楽しく終わりました。彼女の話し方や語彙には、さすがのセンスや知性があふれでています。それでいて、大学時代の、専攻が同じ友人と話しているようなほっとする感じが尽きなくて。山中さんの作品の魅力、もっともっと広めていきたいなと、強く責任を感じます。

詳細は8月売りのジャズジャパンにて。これから書きます。

モルト・カンタービレ(初回限定盤)(DVD付)

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カプースチン 8つの演奏会用エチュード 作品40 PRHYTHM EDTION

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  • 作者: 川上昌裕,ニコライ・カプースチン,アントニー・ニューエル
  • 出版社/メーカー: プリズム
  • 発売日: 2008/11/29
  • メディア: 楽譜
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