53日間の小曽根真さん連続ライブ配信が終わりました。
ジャズだけでなくあらゆるジャンルを演奏して感動させるその驚異的なアーティストとしての高み、
そして気さくな雰囲気、優しく遊び心があり、リーダーシップのあるお人柄、
奥様の女優、神野三鈴さんの素晴らしいプロデュースとサポート。
このあたりは多方面で既に語られています。
私がさらに感じたことを、ふたつ。
ピアノにはさまざまな可能性があります。
ソロでもビッグバンドでもデュエットでも。
小曽根さんが「今日はどのキーでいこうかな」とおっしゃっているのが印象に残っていて、好きな鍵盤の場所で気分に合わせて、好きな調性で弾けたら楽しいなと改めて思っています。
実は日本のクラシックの音楽教育では、9才以前に移調の練習をすると絶対音感が消える説があり、さまざまなキー(調)で弾かせることがそれほど行われていません。ジャズを始める、となったらもちろん12のキーで弾くわけですが。
しかし小曽根さんの今回のライブ配信を聴いて、いろんなキーで弾けたらどんなに楽しいだろうと改めて思いました。
私は、ジャズは楽譜をなぞるだけでしたら少しは弾けますが、即興はあまり得意でもないし、移調は苦手です。
でもお勉強というより、楽しそうだから、まず自分がやってみたいなと思っています。
そしてもうひとつ得たこと。
私は長年コンサートに通いながらエネルギーをいただくばかりで、アーティストに何の恩返しもできないことを、ちょっとだけ寂しく思っていました。
しかし今回、リスナーのコメントに小曽根さんがエネルギーをもらっているとお知らせくださり、そこがとても嬉しかった。
どんなに素晴らしいフレーズを弾けたとしてもそれを聴いていいねと思ってくれるリスナーがいないと意味がないというお話をラジオでなさっていました。
まさに今回の配信で、そこが見える化されたことに大きな意義を感じ、小曽根さんファミリーに参加している一体感が最高でした。
最終回、オーチャードホールでは音声トラブルのあとお詫びをする小曽根さんに、三鈴さんが「大丈夫、そんなことを気にする家族じゃない」とおっしゃっていました。
コメントを書きながら、泣いたり笑ったりしながら配信に参加した53日間。
家族、という三鈴さんのことばがリアリティを持って響いてきて、音楽の可能性、ライブ配信の可能性として心に残りました。
もちろん生のライブに勝るものはないけれど、
物理的にコンサートに行ける人は限られています。
地方在住、子育てや介護、身体が不自由、さまざまな理由でコンサートに行けない人はたくさんいます。
CDとライブの真ん中に位置する新しい形として有料ライブ配信が普及してほしい。そのための大きな布石になる出来事だったと思います。スマホ越しでもライブの感動は伝わるのです。