2月にビルボードの東京、大阪、横浜でレ・フレールのツアーがあり、東京と横浜を聴いてきました。斎藤守也さんと斎藤圭土さんのインプロヴァイザーとしての部分、ふだんは連弾なので同じ組み合わせになるわけですが、違う人と即興したらどうなるのか聴いてみたいなと思っていました。そこで今回、サックスの竹上良成さんが参加。ポップスやジャズ、フュージョン系でのお仕事が多い方なので、すごい私の好きな方面ではとワクワクしながら参加。
まずは連弾。
「ウーシー・ブギ」一体感のあるリズムに心が躍ります。
「灰色の空の下」フランスのアコーディオンで演奏される「ミュゼット」風、、、のワルツが雰囲気たっぷり。
「イーグル」連打を繰り返しながらピアノの内部奏法で深みのある音。はっとするような世界。
ピアノはスタインウェイのたぶんセミコンサート? 内部奏法okでした。
ここでソロ。
圭土さんは、優しく語りかけるバラード「恋文」。
あ、こんなにさりげない感じなんだ、、といつもハッとします。
守也さんはグルーヴが圧巻の「SHINRA」。曲の世界にたっぷりと浸りました。
いよいよ竹上さんとのコラボへ。
まずは「Cross 第2番」。
かなりクラシカルな曲なので、どう来るの?と思っていたら、まず、サックスはかなりジャズっぽい歌い方です。しかしピアノは普段のデュオで弾いているアレンジで、大きな変更はなし(多分)。
この曲にこのピアノパートに合わせるならもっとクラシカルな吹き方では? 驚きました。ところが聴いているうちにだんだんなじんでくるんですよね。そうか、これもありかも、なんか面白いかも。この曲の大人っぽいつややかなバラードとしての魅力に気づいてなかったな…もしかしてこういうアプローチもありだったのかも、と。この曲はクラシカルという勝手な思い込みがあり、それを打ち破ってもらうのが実に刺激的。コラボはこういう驚きがあるから好きです。
その後は、圭土さんと竹上さんのデュオ。「Courege!」は朗々とメロディを歌い上げてから盛り上がる、「Maverick」はホーンセクションをイメージしたそうで、頭からガンガンにスイングする曲。ピアノで聴いていたメロディをサックスで吹いてもらうと表情が変わってすごく新鮮です。
守也さんと竹上さんのデュオは、「野暮天ブルース」。こちらもブルースですから、サックスだと哀愁ただよいます。サックスのあとにピアノが追いかけるような即興フレーズを入れたり、ソロを交代で演奏したり、サビはサックスが吹いてピアノがハモリながら一緒に進んだりと、対話がたくさん。
「Summer Night」は、もともと歌謡曲っぽくて胸キュン系をさらに濃くしたような曲で、それをサックスで吹いたら、それは、もっと濃くなってました。8ビートもしっかりと刻む曲ですし。見た目と音色は室内楽のデュオみたいである意味、エレガントなのに、音は、歌謡曲でビートがしっかり来てる…何かまったく新しい音楽になっているような。面白い!!!
そう、おそらく、サックスプレイヤーは沢山いるけれど、竹上さんはジャズだけでなくポップスの音楽性もお持ちなので、こういうノリも出してくれるのでしょう。
終盤は、再度レ・フレールのふたりのデュオ。ディズニーの「彼こそが海賊」、刻むリズムにしびれます。
「マスカラード」、高速フレーズで飛ばしながらの掛け合い。ぶっ飛ばしながらも、崩れないグルーヴはため息もの。信じられないくらい高速で圭土さんの右手が縦横無尽に駆け巡る、守也さん容赦なく(容赦あるのか?わからない、、)ベースラインがうねるうねる。相手を聴きながら弾く感覚というより相手の音と自分の音が一体化するなかで、火花が散るかのよう。
竹上さんとも和気藹々と会話していて、それがすごく楽しいんだけれど、圭土さんと守也さんのふたりだけの会話になると、身内だし、兄弟だし、もう、遠慮なしに思い切りやっちゃう、みたいな激しさを感じます。もちろんどこかでセーブする部分はあるのだろうけれど。家族の会話って本音でテンポが良くてスピーディですけど、そういう魅力が音になっている。竹上さんが入ることで、ふだん当たり前のように見ているその部分に気づきました。
「Follow Me」「Fancy Fair」「悪魔のしっぽ」は手拍子しながら盛り上がって。ライブはこれがなくっちゃね。配信ライブをイヤホンで聴きながら家でひとりで手拍子してると結構寂しいんですよ。笑 会場で皆と一緒に手拍子が、とても嬉しかった。
レ・フレールの追っかけは3年ほど前からライフワーク的にやっています。2020年は年初の2月11日に船橋でライブがあって、それを最後に自粛に突入。配信やソロ名義のライブはありましたが、生で再び聴けたのは12月でした。ずいぶん間が空いてしまった…。11月には行けなかったのだけど2台のライブがあって、配信で観ました。
12月に沢山ライブをやって、このツアー。半年以上のブランクを経て、また息のぴったり合った演奏が聴けて幸せでした。おふたりの刻むリズムは本当に生き生きしていて、ピアノがものすごく鳴るから、キラキラした音を浴びて内側からエネルギーが供給されるような感覚があるのです。
アンコールは「ルパン3世のテーマ」。レ・フレールも『アニメ・ド・キャトルマン』でカバーしているし、竹上さんももちろん有名曲だから沢山演奏されてきたことでしょう。本編はレ・フレールの曲だから、作曲家本人の曲を竹上さんが解釈して吹きに行くという感じだけど、ルパンはカバーなので、五分五分の勝負のような感じがして、これはまた新鮮でした。ビバップ系のジャジーなソロもあったような・・・こういうカバー物も、もう少し聞いてみたい。
ビルボードみたいな場所で即興演奏多め。フュージョン好き、ジャズ好きの私にとっては願ってもないフォーマットでした。サックスとのコラボもすごく合っていたので、もっといろいろな曲で聴いてみたいです。
守也さんの「小さき花の詩」とか、スムースジャズっぽくならないかしら。「Boogie Back to Yokosuka」とかファンキーに吹いたらめちゃ盛り上がらないかな。…そうそう、守也さんの「旅」ってソロアルバムは、レ・フレールの曲を民族楽器や弦楽器管楽器とコラボしていたのでした。ということで帰ってきてからは「旅」を聴いてます。彼らの曲はいろいろな編成で演奏するとまた別の面白さがあります。
初日の東京は、ファーストセットを聴きました。ちょっと緊張感があったかな。特に、竹上さんが出てきて最初に「Cross第2番」を吹いたときの緊張感はいまも覚えています。曲が進むにつれてなじむあの感じがたまらない。そして初日の最後のルパンになったとき、少しだけ何かほっとした感も。無事に初日が終わりそう、みたいな。
初日の東京と3日目横浜のファーストセットに行ったわけですが、3日目はやっぱり断然なじんでいました。
完成度からしたら千秋楽のほうが高いのかもしれないけど、ライブならではの伝わってくる感覚は初日のほうがビリビリと「来る」。どっちも行けてラッキーでした。
竹上さんご本人のプレイに焦点を当てたライブというのはこれまで参加したことはなく、もちろん様々な場で耳にしていましたが、今回きちんと生で初めて聴かせていただきました。サックスならではの色気やパワーはもちろん魅力で、さらに歌い方のニュアンスが繊細で、ものすごくエレガント。なにげないシンプルな長い音符に、惚れ惚れしてしまうような味。
オールジャンルで、比較的シンプルなレ・フレールの楽曲には、とてもふさわしいコラボのお相手でした。
11・12・1月のライブが、沢山youtubeにあがっていましたので貼り付けます。
レ・フレール ノエル・ド・キャトルマン2020 in まつもと市民芸術館【for J-LODlive】
Les Frères – 2 PIANOS 4 HANDS – Special Live
Les Frères / Noël de Quatre-Mains - December 22, 2020
Les Frères Buggy Woogie Live 2020 in Osaka
まもなく本番!レ・フレールBillboard横浜! pic.twitter.com/0wqpR7VDAX
— 竹上良成 (@Takegami_desu) 2021年2月11日
竹上さんは横浜でお誕生日だった模様。
https://twitter.com/Takegami_desu/status/1360286482708090880?s=20