山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

レ・フレール 品川教会ノエル・ド・キャトルマン 初日

品川教会へ。レ・フレールのクリスマスコンサート「ノエル・ド・キャトルマン」聴いてきました。

 

以下セットリストに触れますのでこれから行くかたはネタバレ注意してくださいf:id:mimeyama:20211201233109j:image

 

 街の喧騒から一歩、教会に足を踏み入れると、独特のしんとした清らかな雰囲気が広がります。パイプオルガンの演奏が6時半からありました。「グローリーモーメント」や「ハッピーソング」といったレ・フレールのオリジナル曲もオルガンで演奏していて、こうして聴くと讃美歌っぽいんですね。シンプルなリズム、同じパターンを繰り返しながらうつろうハーモニー。民謡や讃美歌といったポピュラーソングの王道から吸収された要素が彼らのこうしたオリジナル曲からは感じられます。

ご兄弟が登場して、まずは「ひいらぎかざろう」。これは「左手のための伴奏形エチュード」でロンドン橋のなかで使っているパターンと共通点の多いアレンジ。シンプルな同じ音を繰り返す伴奏が、バグパイプのようですごく映えます。そこから「シャムロック」、これもアイルランド民謡で、ドローンというのでしたか、同じ音をずっと鳴らすバグパイプ的なベースラインが印象的。ピアノが力強く響く、鳴る感じ、その音に包まれて、一気に気分が高揚します。品川教会で聴くと、ピアノの澄んだ響きが美しい。

 さあ、クリスマスソングの始まりです。
 品よくスイングする「そりすべり」。3度でシューっと高音域から下がってくるグリッサンドが、なんともいえずキラキラ輝いてます。
 かなりのアップテンポで突っ走る曲は、手拍子するのもなかなか大変。

 そこからオリジナル曲の「宝探し」。高音部で3拍子の短調のメロディがきらめきます。そこからロシア民謡風にアッチェレランドで盛り上がり、「カリンカ」などのロシア民謡メドレーへ。守也さんがプリモで右手のメロディを連打すると、まるでマンドリンみたい。ノリが最高。楽しい!!

 一息ついて、圭土さんのソロで「Rainy Day」。クリスタルな音の粒が降ってくるかのようなイントロから、豊かな音色で旋律がふわっと広がっていきます。降り注ぐ恵みの雨のよう。「ラスト・クリスマス」のフレーズをちょっとだけ引用していたのも素敵。続いて、守也さんの「HOSHIZORA」。圭土さんと並べて聴くと、やっぱり音が柔らかい。優しく遠くで光り輝いて、そっと見守って、包み込むような音。

 ふたりが揃って、「灰色の空の下」。アコーディオンで弾いても似合いそうな、フランスのミュゼットっぽい、そこはかとない哀愁の漂う3拍子。このミュゼット感をクラシカルで端正なタッチできっちり仕上げて弾くと、なんともエレガント。 「フォー・キッズ」、慣れ親しんだこの曲のメロディも、なんだかこの教会で聴くと、荘厳で華やかな色合いなのは、なぜなのでしょう。

 ブギウギ即興へ。「シャンシャンシャン…」クリスマスの鈴みたいな高音域の和音が楽しい。あれ?いつのまにかどんどんクリスマスメドレーになってる。ブギウギのノリで一気にぐいぐいどこかに連れていかれてしまう感じです。

 ここで、少し落ち着いた感じで、守也さんのギリシャをテーマにした組曲「ムッシュ・グレコ」。そう、アイルランドにロシアに雨、星、フランス? そしてブギウギだからアメリカ? ときてギリシャ。世界旅行をしている感じですね。異国情緒のある組曲。ゆったりと陽気に始まり、だんだんヒートアップして、またもや守也さんのマンドリンみたいな両手を使った連打奏法がアッチェレランドして炸裂。すごい盛り上がる。ライブだわ。

 

 早いもので最後の曲。「賛歌~四海兄弟」。東日本大震災のあとに祈りを込めて圭土さんが作ったというこの曲。四海兄弟は、世界中の人が、お互いを兄弟のように大切に思う様子という意味。讃美歌のような「賛歌」が、この教会の響きで聴くとなんともいえないスケール感で迫ってきます。トリルをふたりでハモるのとか美しすぎる! そして後半テンポアップした「四海兄弟」。光が差してくるようなフォルテのハーモニーとリズム・・・まばゆいです。続いて「もろびとこぞりて」…クリスマスのメドレーに突入します。毎年のように聴いているけれど、ほんとうに色とりどりの宝石箱みたいな素敵なメドレーです。

 最後は、Boogie Back to YOKOSUKA。イントロのところはクリスマスの讃美歌? を入れたクリスマスバージョン。

 

 ホールの響きで曲の印象って変わるものだなと感じました。この教会で聴くと、どれもオルガンの讃美歌ふうの気高い響きになる。荘厳なハーモニー。もちろんブギウギをベースにした手拍子せずにはいられない強力なリズムもあって。スタインウェイの高音域がとても華やかに輝いているのも印象的。

 世界の民謡をピアノが歌う!!歌う!!!歌いまくる!!!気づいたら私も一緒にメロディを口ずさんでました。

 

さあ、初日が終わりました。明日も行きます。明日は川島ケイジさんがゲスト。

 

 クリスマスツリーが輝く12月にふさわしいクリスマスコンサートでした。