読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

小曽根真JAZZ講座@一橋大学兼松講堂 2011年4月29日

今日は一橋大学の小曽寝さんジャズ講座に娘を連れて行ってきました。会場は国立駅からすぐ、森のような巨木に囲まれたキャンパス。大学の中ってほんとに緑が濃いですね。兼松講堂は初めて行きましたが、芸大の奏楽堂みたいな歴史を感じさせる建物で、音響も、なかなかでした。

前半は小曽根さんが教授をつとめる国立音大の学生さんたちのベース、ドラムス、サックス、途中からピアニストも入れて、彼らのアンサンブルを指揮しながらもっとこうしようとセッションを仕切るみたいな感じで教えつつ、ジャズ講座。ブルースとは何か、リズムがとにかく大事、そのためには聴く、聴く、聴くしかない、という話が印象的でした。ジャズ講座では、「モーニン」など、超有名なスタンダードを小曽根さん流に演奏してくれたのがとても良かったなー。オリジナルなんかの複雑な曲だとわかりにくいんですけど、小曽根さんが左手で弾くベースラインというのは、鍵盤を離す瞬間というのが実にきっちりと歌われていて、音符の長さで見事にスイングなビートが伝わってくるんですね。もう、どうやったらああいうのベースラインが弾けるのかなあ。

小曽根さんがラジオのパーソナリティもやっていらっしゃるから、まあお話がうまくて当然なんですけど、しかし、教えるの、うまいですね。普通、天才ミュージシャンって、できない人の気持ちがわからないから、教えるのは苦手でもおかしくないのに??? もちろん普段、ひとりではなく、たくさんのミュージシャンと共演してきていて、そこで、お互い「もっとこうしたい」という意見を交換することはやっているわけで、教えるのも、そうしたやりとりの延長線上でやっているんでしょう。専門的なお話をされていて、小3の娘にはちんぷんかんぷんだろうなと思いましたが、終わったら「小曽根さんのお話が面白かった」と言っていました。

後半は、小曽根さんのソロ。「いつか王子様が」にはじまり、小曽根さんが12歳で行った運命的なコンサートで、オスカー・ピーターソンがいきなり弾いてくれた「クバノ・チャント」。クバノってCubana、つまりキューバですよね。今も小曽根さんが弾いてくれるもののなかで、やっぱり一番いいのはラテンっぽい演奏かなあと思うし、ショパンのアルバムを出したときも、ラテン系のアレンジが一番いいなと思ったし、やはり12歳のときからラテンに惹かれていたとは。

弱音でキラキラと弾いてくれた音の美しさもはっとするようで、ものすごい宝物をもらった気分でしたが、強烈なタッチでぶっ飛ばしていたタンゴ、ごりごり、ぶいぶいと弾いてた低音がよかったなー。

きれいな音を出すにはどうしたらいいのか、なんてピアノ教育関連の本を書くときには、そればっかり考えてあーでもないこーでもないと調べていることがあるんです。

でも、あのタンゴでのゴリゴリした音は汚いわけではないんだけれども「きれい」至上主義では絶対に出てこないような音。でもその音が今日の私にとっては、一番心に響くというか、心にぐりぐりと刻まれるようでした。音がきれいなのも価値があることだけど、表現したいことが伝わるかどうかが、一番大事なんですよね。

今日は太っ腹にも無料のコンサート。小学生や幼児を連れたお客さん、ちらほらいらっしゃいました。小曽根さんがアンコールを弾こうとしたとき、幼児がぐずる声が会場の外から聞こえてきました。すかさず小曽根さん、さっとマイクをとり、眉をひそめて大きくうなずき、「そうなんだよ!」 客席は爆笑。そこでもう一度、弾き始めました。このとっさのアドリブがあるのとないのでは、ムードがどれだけ違ったことでしょうか。前半のジャズ講座で「聴く」ことの重要性を語っていただけに、「すごいもんだなあ」と感服しちゃいました。

ブルーノートで連続1週間公演も素晴らしいし、ぜひやってもらいたいけれど、うちの娘のような小学生も含めて、ブルーノートにはなかなか行きにくい人たちもいるのが現実です。そういう人たちがたくさんいたように思いました。2歳ぐらいの赤ちゃん連れのお母さん、車椅子の方、自転車で帰っていった地元の人らしき方。地道だけれど、ジャズを広めてみんなの心を豊かにしてくれる、とても価値のあるコンサートだったと思います。

そうそう、小曽根さん、コンチェルトの前には、パソコンにスコアを打ち込んで、カラオケを作って練習しているっておっしゃってました。カラオケ作りがまたオーケストレーションの良い勉強になるので面白い、と。ほんとに小曽根さんって「えらい」というより、音楽に対して、貪欲!!!! 素晴らしいです。私も欲張りなたちだし、負けないようにがんばらなくちゃ!!!!

最後に、ひさびさに小曽根さんのブログを見に行ったら、こんな話が書いてありました。ポーランド大使館でアルゲリッチに会って、チックコリアのコンサートに一緒に行かないかと誘い、明日のフライトで発つからと断られてめげたけれど、翌朝になってフライトは延期したと電話がかかってきた。

結局、アルゲリッチをチックの楽屋に連れて行って、その日は上原ひろみちゃんを含むスタンリークラークバンドも来たんだそうです。その写真がアップされていました。すごすぎて笑っちゃいました。アルゲリッチに声をかけちゃうその勇気、素敵です!!! 

もともと小曽根さんの演奏が好きで聴いているのだけれど、こうしてお人柄に触れるエピソードが目に入ってくると、それにもいちいちははぁーと感じ入り、刺激になることが多いのです。小曽根菌ってやつでしょうか。

http://makotoozone.com/blog/

ロード・トゥ・ショパン

ロード・トゥ・ショパン

ラテンなショパンが聴ける


ディア・オスカー (オスカー・ピーターソンに捧ぐ)

ディア・オスカー (オスカー・ピーターソンに捧ぐ)

  • アーティスト: 小曽根真トリオ,FIELDS DOROTHY,JACQUES ANDRE MARIE PREVERT,OSCAR EMMANUEL PETERSON,RAY BRYANT
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1998/10/01
  • メディア: CD
  • 購入: 1人 クリック: 9回
  • この商品を含むブログ (17件) を見る
クバノ・チャント収録