山本美芽のフュージョン・ダイアリー

音楽ライター山本美芽によるジャズとフュージョンについての取材日記です。

松居慶子さんブルーノート東京公演 2013年2月11日 1st

松居慶子さんの日本公演。今回、ブルーノート東京のタブロイドペーパーで紹介記事を執筆したり、年明けに英語教育のインタビューにうかがったこともあり、ブルーノート東京で行われた2日間の公演のうち、11日のファーストショーに行ってきました。ちょっと遅くなりましたが、簡単にご報告。

私にとって慶子さんのライブは、オークランドのYoshi'sで聴いて以来。かなりひさびさです。
今回のメンバー、ドラムのスティーブ・ハスさんなんかは本当に初めて生で聴きます。

スムースジャズの女王として全米にその名をとどろかせた慶子さんですが、今回のライブを聴くと、とてもジャズっぽい、もしかして古風な言い方かもしれませんが「フュージョンぽいなあ」という感触があって、実に面白かったです。具体的にいうと、メロディの美しさ。アンサンブルの見事なバランスや揃い具合、決まり具合。全員で一丸となる場面もあれば、各奏者のインタープレイもある。といってももちろんそんなに長くないですけど、でも、そういう聴きどころがけっこう楽しい。

それだけ迫力のバンドサウンドなので、生ピアノではバランスが難しいですね。この問題を解決するために、長年のスタイルですが、メインで弾いていたのはステージ中央のキーボード。ときどき静かな曲やソロで聴かせるときに、グランドピアノを弾きます。たとえば上原ひろみの場合、ドラムがかなりの音量で手数を叩きまくるパターンに対して、キーボードに頼ることなく自らの肉体を酷使して弾きまくり、あとはマイクで音をうまく増幅させていて、ピアノのかわりとしてのキーボードは、超巨大な東京国際フォーラムでも使いません。このへんの楽器に対する使い分けが、それぞれの音楽性でありアーティストのキャラクターでありスタイルであり、非常に面白いところです。

慶子さんのようにキーボードを使うのも、シンプルなメロディをひきたたせるのにはバンドのなかでは一番良い選択のひとつでしょう。それでいて、という言い方も失礼かもしれませんが、ソロでグランドピアノを弾かれると、あまりに素晴らしく、・・・もう絶句でした。澄み切ったクリスタルのような高音。語りかけてくるような中音域でのメロディ。異次元への扉を開くかのような低音。あのタッチはすごいです。特にすごいと感じたのがペダリング。低音から高音まで、パレットで絵を描くように自由自在に混ぜ合わせていて、それで一点の濁りもないのです。ただピアノ一台で弾いているのに、まるで、シーケンサーで「ご〜」とか「しゅわ〜」みたいな音が出ているような錯覚すら覚えました。あれはいったい…???

ブルーノート東京は、広さもあり、ドラムやベースがアグレッシブに動くタイプの音楽でも音がこもらないですし、しかもグランドピアノもコンサートホール級のものが置いてありますので、2通りを最高の音響で楽しめました。おそらく松居慶子さんを聴くにはベストな場所のひとつじゃないかな。

懐かしい曲、最近のアルバムからの曲、どちらも素晴らしく、心に残りました。昔はやった曲だけで盛り上がるとか、そういう展開ではいっさいなく、デビュー当時のころから、コンスタントにいい曲を書いてきて、最近の曲も過去の名曲に負けないインパクトがある、これが彼女のコンポーザーとしての真の実力をよく示しているし、だからこそ25年間やってこれたのでしょう。慶子さんは曲を作ることを「作曲する」ではなく「受け取る」とおっしゃいます。受け取ったメロディの数々、ほんとうにどこかから通って私たちのところにやってきたんじゃないかなぁと、聴きながら、ふと感じてしまいました。

慶子さんの曲、クルマのなかで聴くと、ほっとして落ち着いて運転できるので、よく車のなかで聴いてます。


セットリスト、ファンサイト掲示板から転載させていただきますね。

【2/11 Blue Note Tokyo演奏曲リスト】
1 THE WHITE GATE
2 DOLL
3 THE ROAD...
4 EMBRACE & SURRENDER
5 NGUEA WONJA
6 ACROSS THE SUN
7 LIGHT ABOVE THE TREES
8 SAFARI
9 BRIDGE OVER THE STARS

Encore
Piano solo medley WATER LILY/ TEARS OF THE OCEAN/ DEEP BLUE/ FOREVER, FOREVER

終演後、楽屋にお邪魔して、記念写真を撮らせていただきました。一緒に写っているのは、ライブをご一緒した木更津でピアノ教室を開いている萩本亜矢先生です。亜矢先生と終演後に「ペダリングが神がかってましたね〜!!! ドラムの人もめちゃめちゃ繊細かつタイトですごかったぁ」(私)「転調が見事ですねぇ〜。サックスの人の音色もすごくよかった」(亜矢先生)と、意見交換で盛り上がっておりました。

現在アメリカで新しいアルバムを製作中の慶子さん。
もうすぐロシアツアーに東欧ツアーが始まるそうで…また日本のコンサートで会える日が楽しみです。英語教育のサイトでの慶子さんインタビューは、たぶん3月ごろに公開されるので、またお知らせいたします。