会場に着いたのは夜の9時近くで、途中からになりましたが、ピアニスト和泉宏隆さんのトリオ「しなやかな風」発売記念ツアー、ブルースアレイの公演に行ってきました。
トリオでの和泉さんライブを聴くのは、6−7年ぶりだと思います。スクェア退団後、ずっとソロピアノで頑張ってこられて、たくさんアルバムもリリースされていますが、新作の「しなやかな風」を聴いて、「あ、98年のスクェア退団直後に和泉さんがやりたいっていってたのは、こういうアルバムじゃないかな。ついにできたんだ」と感じました。いまが2012年。98年って14年前ですか?
そのころのインタビューで和泉さんは、ラーシュ・ヤンソンについて熱く語り「ジャズを超えてますよね」と言っていました。いま思うと私は、その「ジャズを超える」という言葉の本当の意味がよくわかっていませんでした。
ジャズの定義にもいろいろあります。でも最近すごくわかってきたのは、ピアノはジャズにおいて、打楽器としての役割が強い場合が多いんですね。たとえば小曽根真さんや塩谷哲さんのスタイルはそうです。弦楽器的なアプローチもされますけど、リズムに重きをおいています。
和泉さんは、まずメロディがあり、響きがある。ピアノは打楽器である前に弦楽器。そしておそらく、そのスタンスは、ジャズの中では、少数派と言っていいのか迷うけれど、確かに多数派ではないんですね。最近それがわたしにも、ようやくよくわかってきました。
久しぶりに聴いた和泉さんのトリオ。やはり、ピアノトリオとしてのご自分のスタイルを完全に確立していました。
アルバムで聴いたとき、なんだか鳥越さんのウッドベースが室内楽のチェロじゃないかと思うような弓を使った演奏をしていました。ドラムの石川さんといえば、私にとってはディメンションでの演奏が一番多くて、重くて速いプレイにいつも心がわしづかみにされていたんですが・・・リリカル一辺倒でなく、叩くときはしっかりバシッといっているのに、ピアノの倍音をたっぷりと聴かせるようなドラミングは、不思議というか名人芸というか。
懐かしい和泉さんのメロディの数々。スクェア時代のものからも、けっこう弾いてくれました。最近自分でもいやになるぐらい辛口でいろんなものが気に入らなく欠点ばかり数えてしまう私。ひっさしぶりに和泉さんのピアノを聴いて、もしも、いいなと思えなかったらどうしようと、一抹の不安があったけれど、そんなことはまったくなくて、ピアノは昔よりもさらにさらに上達されていたし、安定感もばっちり。なによりメロディの歌い方のすばらしいこと! ピアノってこんな音がしたんだ、と、はっとしてばかりでした。毎日自分でもピアノ弾いているのに、いったいどういうことでしょうか。だからこうやってライブに通わなくちゃだめなんだよなー。良い音をまず聴かないと、ピアノでこんな音が出ますよって、気がつかないんですよね。
しかし、和泉さんもスクェアをやめて、14年かぁ。忘れもしませんよ、和泉さんのインタビューに伺った2月のある日、ご自宅のスタジオの前で、実は和泉さんはスクェアを抜けることになりましたって言われて、腰が抜けるほど驚いたあの日を。
14年たって、私もスクェア以外にいろんな音楽、いろんなピアニスト、たくさん聴いてきました。ひさしぶりに聴いた和泉さんの音楽。ジャズがベースだけれど、クラシックとポップスの影響が強いんですね。豊かな音色、はっきりとしたメロディ。だからジャズといえばジャズなんだけれど、誰かのコピーではなくて、きわめてオリジナリティの濃い自分のスタイルを作りあげたんだと思います。
宝島も、フォーゴトン・サガも、もう、ずーっと長いこと聴いてきたけれど、いまも色あせない名曲。もはやこれらは、スタンダード的な域に達しているのではないでしょうか。
ピアノの練習に疲れたら、また和泉さんのピアノを聴いて、自分を休ませてあげよう、そんなふうに思えるライブでした。
ここからはピアノの先生向けの記述になりますが・・・
和泉さんのピアノソロは、ピティナのステップの課題曲にすごく良いと思います。さどはら知子先生、ぜひお願いしまーす!!!!…とここまで書いてアマゾンで見たら、品切れで48000円ですって!!!??? なにー!!?? うちにもこの楽譜あったはずなんだけど…どこにいっちゃったんだろう!!?? ヤマハミュージックメディアさん、再販ぜひ、お願いします!!!!

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