山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

斎藤守也 「Your STORIES」名古屋公演1/14、大阪公演1/15 1時~/5時~

名古屋と大阪で斎藤守也さんの「STORIES」楽譜集、発売記念ライブとなる「Your STORIES」が行われました。2020年5月に発売された守也さんのソロアルバム「STORIES」に収録曲をすべて書き起こした楽譜集。ちょうど去年の今頃、1月に校正をお手伝いもさせていただき、私にとっては大切な作品のぎっしりと詰まった楽譜です。それらの曲を作られた斎藤守也さんが楽譜に収録されたオリジナル曲を演奏するライブ。

5月に予定されていたけれど1月に延期になっていました。半年以上待ってようやく迎えたこの日。

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まずは名古屋ボトムラインのBLカフェ。ここはヤマハのピアノが置いてあるライブハウス。守也さんがピアニッシモで〈カルーセル〉の演奏を始めたら、上の階から同時に始まった別のライブのドラムのキックの音にベースの音が筒抜け。ちょっと聴こえるとかではなく。あとで聞いたところによると、それまで一度もそんなことがなかったのだそうです。

私はあまり気にしないで演奏に集中していました。

日頃、子ども達がドタバタうるさいところで練習してますから。

 

「いつかの空」「COLZA」と続きます。ボリュームあがる箇所は気になりませんが、音量が下がるとドラムのキックが全然違うテンポで聴こえてきます。

ちょっと気になるか、、、

守也さんも、MCで、気になるよね・・・アレンジ変えちゃおうかという話をしつつもライブを進め、静かな曲「フォトアルバム」で、ついに途中でロックバージョンに。さっきMCのときに「変えちゃおうかな」とか話しながらふっと言葉が途切れた時にアレンジを考えていたのかもしれません。その場でアレンジ変更、大変だったと思いますが、聴いている側はそれはもう貴重な場面に遭遇、手に汗握る展開でした。他の曲も全体的に激し目のアレンジや解釈に。

 

「CITY BLUE」に続く「IN THE RAIN」は、アルバムだと普通の雨で途中降り方が強くなるぐらいのイメージでしたが、台風並みの土砂降りな感じ。マスクを着用しての大熱演…。その土砂降りから、さらにSTORIESの終盤の大曲、SHINRAとBANDIDO-踊る影-に突入。この2曲は低音をガンガンに慣らすのでドラムの音も聞こないぐらいのパワー。守也さんの1曲通して左足はビートを刻んでいます。4つ打ちのときが多いけれど、時々細かく8つ踏んでいたりして、まるでドラマーがハイハットを踏んでいるかのよう。SHINRAは立ち上がって踊りたくなるような、そして後半はコーラスをしたくなるような高揚感。BANDIDOは楽譜には書かれていない即興を織り交ぜて、それはもう緊迫感があってドラマチックでした。

アクシデントのあったライブにはよくあることですけど、一体感があってもう白熱して大満足。充実感たっぷりに帰ろうとしたら守也さんがお見送りをしてくださって。感激でした。

私はこの日は朝早かったので名古屋に泊まり、翌日の午前中に大阪に移動。f:id:mimeyama:20220120205520j:image
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そして昼の1時からと5時から、カワイ梅田のコンサートサロン「ジュエ」で再びコンサート。まだ1日もたっていないのにまた守也さんのソロライブって・・・贅沢すぎますね。私は両方とも聴かせていただきました。

カワイ梅田のコンサートサロン「ジュエ」はシゲルカワイがある素晴らしい空間。
繊細で静かな曲目の美しさ。「花灯り」言葉にできない弱音がさざなみのように。低音を響かせる曲では聞いたことのないような鳴り。

1stではノスタルジー、2nd ではOROSHIを弾いてくださいました。ノスタルジーの夢見るような現実離れ感に浸る時間はたたもう幸せ。OROSHIのビートを久しぶりに聴きましたが、ああこれは、SHINRAにも通じる世界。

In the Rain は昨日にも増して、シゲルの弦の共鳴がものすごい。SHINRAからBANDIDOのグルーヴ感、、、シゲルで聴くとまた音色の変化がカラフルで、音圧が体にビリビリきます。スピーカーがないピアノのコンサートでこういうのはあまり普段ないかも。アンコールでのひとりレ・フレールは圧巻。キャトルマンのテーマにOn y va! に…アップテンポで弾いて弾いて弾きまくって。ああ、これ、横須賀のヤンガーザンイエスタデイの忘年会ライブの最後にこんな感じで弾いてる。忘年会モードじゃなくて新年会モードですね。マスクしたまま激しい曲をぶっ続けにいったい何曲・・・酸素は? 朦朧としてない?大丈夫? と心配になるほどの熱演のあと、さらにふり絞るようにしてぶっ飛ばすBoogie back to YOKOSUKA イーブンソロバージョンへ。長年弾き倒してるこの曲が、限界寸前に見える状況でもバチッと決まる凄み。いやはや盛り上がる。圧倒される。すごい音圧。これぞライブ。終わった瞬間、スタンディングオベーションで割れるような拍手が起こりました。守也さんが袖に引っ込むと「すごい、、、!!!」ため息が一斉に。
マスクしてましたからね、、、それで足もずっとストンプ。
その状況で。本当にため息のでるような凄まじい演奏。

1st より2ndのほうがしんどいはずなのに、どんどん調子を上げる様子は、マラソン選手の35キロ地点からのスパートを彷彿させます。

 

昨日名古屋で7時から 今日1時からと5時から

24時間のうちに3回斎藤守也さんの濃すぎるライブを聴いたことになる。

こんな24時間かつてない、、、、

膝に乗せたかばんを持って聴いていたのだけれど、かばんの生地がピアノの音でずっとビリビリずっと振動してた感覚が、まだ指先に残っています。

 

換気のためのトークコーナーが毎回あって、そこでお客様からの質問を受けてひとりひとりと対話されていたのも、とても聴いていて興味深かったです。作曲するときに何を考えているのかという質問が名古屋でも大阪でも出て、つまり、表題音楽的に、ストーリーが先にあって描写しようとして…そのもとの話がある?とリスナーは考えやすいけれど、作曲モードになると、そういう話がどうのこうのではなく、音の1粒ずつが次どこに行くか、次は何と何が来るか、その連続の作業になっていく、というようなことなんだろうな・・・と私なりに解釈しながら聞いていました。

我が子を留学させていいのかどうかという相談や、留学するときに何を考えてどんな気持ちだったか、それから音楽で食べていけるという確信はいつからだったのか、といった質問も。皆が抱える不安で守也さんも通ってきた事柄について、本音を聞くことでヒントが欲しいといったところでしょうか。答えていくざっくばらんな言葉の端々から鋭い感性と真摯な姿勢が伝わってきます。

 

守也さんが弾いて鳴った音と振動が充満する空間。びりびりと震える感覚。そして息をひそめて耳を澄ます、響きあう弦と弦がつくる音の渦。流れゆく旋律、鼓動のように脈打つビート。あふれる音、押し寄せる音に包まれていた時間の記憶。2days連続はあっても、2日間に3ステージというのは、コロナ禍ゆえの特殊なシチュエーションかもしれません。

 

そして大阪から帰った翌日にはもうまん防が目前というコロナ状況。そんなぎりぎりの状況下で、リスナーとミュージシャンがライブというわずかな時間にエネルギーを激しく燃やした鮮烈な記憶が、これからの日々の支えになってくれる気がします。

 

ライブ後に、歩いてホテルに移動しながら

脳内BGM「CITY BLUE」

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翌朝、大阪のホテルの窓から

脳内BGM

「いつかの空」
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