山本美芽の音楽ライター日誌

アーティストの取材執筆記録です。

「吉田兄弟×レ・フレール」

以前、コンサートで聴いて、その幻想的な世界が忘れられなかった…

レ・フレールと吉田兄弟のコラボアルバムがついに完成。

 

レ・フレールのオリジナル曲は、花鳥風月を思わせる幻想的な「シャクナンガンピ」、「JOKER]などのお祭りの強烈なビートなど「和」を表現したものが結構あります。それと吉田兄弟の繊細で鋭く、はっとするような間を表現する三味線が、合わないわけがない。時間を彫刻するような鋭さのある三味線を、ふんわりとピアノが包み込むような場面が沢山あります。

 

吉田兄弟は、「RISING」などのロックな8ビートの曲を作っています。レ・フレールも斎藤守也さんが「パラレルワールド」などでロックテイストを作っていて、それぞれの解釈がぶつかりあって共鳴、とバンドっぽい格好良さが爆発的に出てくる。ジャズっぽい即興があるときはスリル満点に、あるときは対話のように入ってくる。

 

新曲の「転々」は、レゲエのような後うちをピアノが弾き続ける中、淡々としたメロディを三味線がつまびきます。余白を効果的に使い、うつろう音。一瞬にして曲の世界に引き込まれる、不思議な感覚。

 

三味線2丁とピアノの連弾で4人のアンサンブルは、おそらく史上初の編成と思われます。そこで浮かび上がったのは、

 

ロック。幻想的。和。間合い。ブルース。鋭さ。柔らかさ。インタープレイ、かけあい。

 

ピアノと三味線。アコースティックな弦楽器だけで表現される音が、音の立ち上がりから消えるまでを筆で描くように、はかなく、味わい深く、力強く。

 

発売からもう1か月ほど繰り返し聴いていますが、まったく飽きず、まだまだじっくりと味わっていきたい作品です。