吉田兄弟 初配信ライブ~三味線だけの世界
2020年7月10日(金)
吉田良一郎(津軽三味線) 吉田健一(津軽三味線)
三味線の兄弟ユニットで長年活躍してきた吉田兄弟。レ・フレールとのコラボがきっかけで演奏を聴き、あまりの音楽性の高さと、超絶なテクニックと、強力なグルーブ、エネルギーとメッセージに満ちた楽曲に魅了されていた。2020年7月10日に、配信ライブで初ライブ。
いつもステージでは遠くから見ていたので、演奏する二人の顔をアップで観たのは初めてだった。もちろん写真では見ているが、演奏する姿を間近で見るとイメージが湧く。兄の良一郎と弟の健一。
冒頭、良一郎が弾く姿は腰がどっしりと据わっていて安定しているのだけど、湧き出すグルーブ感で肩や腕のあたりが踊っているように見える。もう見た目が熱い。隣にいる健一は、ずっと力が抜けているように見えて、クール。でも音は良一郎に負けずに熱い。
2月のライブが最後で、5か月ぶり。「久しぶりにやってもちゃんと合った」との話。これだけ脂ののった現役の時期に半年近く舞台を踏めずにいたとは、なんともったいないことだろうか。配信の機会があったことを改めて貴重に感じる。
彼らの魅力はなんといってもビート感でありグルーブ。シンプルな8分音符を刻んでいるだけでも、背中がぞくっとするような気持ち良さがある。
リズムが正確というレベルが地面にあるとしたら、はるかかなたの空を飛ぶようなレベルか。時間の上を点と点で刻んでいくのが音楽というアートのひとつの形だが、その切り取り方、タイミングの取り方のアートな境地が、もう、たまらない。
時折、すごくファンクビート的というか16分ビートのようなうねりを感じて、それは私が普段聴いている日本のフュージョンと近いものを感じる。日本の伝統的な一瞬を切り取る「間」の美しさ、あるいは脈々と続く鼓動、それらを現代的なセンスで聴かせてくれるのだ。時折掛け声が入るのが、また良いアクセントとなる。
三味線は、弦を弾くだけでなくて胴にバチを打ち付けたときに太鼓みたいなカツーン!バシーッ!というような余韻がする。おそらく「サワリ」というのだが、途中、ひとりずつソロで弾く場面で、特にこのサワリのコントロールが強調する音にだけついている様子がよくわかった。繊細な音の造形の素晴らしいこと。詩情豊かな味わいも堪能した。
無観客の配信ライブは、一発録りレコーディング的な部分がある。録画が残ってしまうから無茶はできない、でもやはり構成はライブだから、演奏していくうちに内側からテンションが上がってエンディングへ向かっていく。演奏では、クールに完成された美しさを追求する部分と熱くエネルギーを伝える部分がせめぎあっていて、冷たすぎても面白くないし、熱くなりすぎると崩れる。
その瀬戸際を追求しているギリギリな感じが、この配信ライブでも伝わってきた。もともとの演奏力の安定して高いところに、まず良一郎がテンションを上げ熱くなり、健一も徐々に熱くなりる。ふたりの相互作用的に音の熱気、「間」の鋭さが高まり冴える様子に、こちらも手に汗握った。
もしかして配信だからダイレクトに細かい部分がわかって楽しめた部分も大きかったのかもしれない。
とにかくもっと彼らの音を聴きたくなった、そんな時間だった。
演奏曲目 配信をメモしたものなので間違いや抜けがありましたらご容赦ください。
たんと節
鼓動
AIYA
月光(健一ソロ)
時雨(良一郎ソロ)
百花繚乱
デュアル
津軽じょんがら節
アンコール
モダン